COLUMN

現場でAIが使えないエンジニアへ。取り残されない積み方

公開日 著者 ENFI編集部 監修 米田葵

この記事の結論

AIが使えない現場でも、AI時代に通用する力は積めます。現場で積めることと、現場の外でAIに触れる時間を分けて考えましょう。

客先の端末では生成AIのサイトにアクセスできない。社内規定でAIコーディングツールの利用も止められている。その一方で、SNSを開けばAIで開発した話ばかり流れてくる。自分だけ置いていかれている気がする、という相談は増えています。

この不安は、まず分けて考えたほうが扱いやすくなります。現場で積めることと、現場の外で自分で用意する時間は、別の話だからです。

現場でAIが使えないのは不利?

作業の速さという点では、明らかに不利です。米田は、AIが使えない現場にいることを、鉄砲が使えるのに竹やりで戦っているようなものだと話します。同じ実装量をこなすのに、かかる時間が変わってきます。

ただ、これはエンジニアとしての価値が決まる話ではありません。米田はX上でも、AIはドーピングのようなもので、エンジニアが扱えると強くなれると発信しています。扱う側の力があって初めて成果につながる道具だ、という見方です。

もうひとつ。米田は、AIが使えるかどうかに関係なく、相談を受けたときにはその人が相談に至るまでに何を調べたのかを聞くと言います。何が分からなくて、どこまで調べて、どこで止まったのか。これを説明できる人は、AIを渡したときにも質問の仕方が違います。逆にここが曖昧なままだと、AIが使える環境に移っても、AIが出してきた回答を自分の作業に活かせません。

不利なのは手の速さであって、考える力そのものではありません。焦って現場を飛び出す前に、この区別をつけてください。

AIが使えない現場でも積める力

積めるのは、クライアントの課題や困りごとを言語化する力と、計画やマネジメントの経験です。米田はこの2つをヒューマンスキルとして挙げています。

課題の言語化は、AIが使えない現場のほうがむしろ鍛えられる場面があります。顧客が「使いにくい」とだけ言ってきたとき、何がどう使いにくいのか、どの業務のどの手順で詰まっているのかを聞き出して、仕様の形に書き直す。この作業は、要件が曖昧なまま始まる案件ほど多く経験できます。

計画とマネジメントも同じです。見積もりを出し、タスクを分け、遅れそうな箇所を早めに申告する。レビューで指摘を返す。こうした経験は、ツールの制約とは無関係に積み上がります。そしてAIコーディングを使う開発では、何を作るかを決めて指示を出す人の役割が重くなります。積んでおいて損をする類のものではありません。

代表・米田の視点 AIが使えない現場でも積めるものは、クライアントの課題や困りごとを言語化する能力や、計画・マネジメント能力といったヒューマンスキルです。正直、ここは環境に関係なく積めるところだと思うんです。AIが使えないことを理由に止まってしまうより、今の現場で積めるものを積んでおくほうがいい。

現場の外でAIに触れる

自分で契約してしまうのが一番早いです。米田が勧めているのは2段階で、まず普段の生活でChatGPTやGeminiのようなAIチャットを使うこと。次に、コーディングに使いたいならCursorやClaude Codeを契約することです。

月3000円程度でAIコーディングエージェントが使えるのは、割のいい自己投資だと米田は話します。書籍を1冊買うのと変わらない金額で、毎日手を動かせる環境が手に入ります。

ここで必ず守ってほしいことがひとつ。業務の情報を個人のAIツールに入れないでください。客先の仕様書もコードも、絶対に対象外です。題材は自分のものを使います。家計の集計、趣味の記録、読書メモ。何でも構いません。

触り方については、ENFIのQUESTで受講生に伝えている進め方が参考になります。ひとつは、コードを暗記しようとしないこと。書き方はAIに聞けばいいので、何を作りたいかを決めるほうに頭を使います。もうひとつが15分ルールで、エラーで15分悩んだら、AIに聞く、検索する、人に聞く、の順に切り替えます。自力で解くことより、作りたいものが動く状態まで持っていくことを優先する、という考え方です。

設計を考えるだけならスマホでもできます。通勤中にAIチャットと機能の相談をして、家のPCで実装する。平日に時間が取れない人ほど、この分け方が役に立ちます。

現場にAIの導入を提案するには

提案そのものは、できる立場なら試す価値があります。米田は、今の時代にセキュリティを心配してAIを導入しないのは機会損失が大きすぎると考えています。

ただし、SESなど客先常駐の立場だと、今のルールに意見を言う場面自体がなかなかありません。そこで米田が勧めるのは、プロパー社員とAIの話題で盛り上がれるように、自分も情報をキャッチアップしておくことです。

順番としてはこうなります。

  1. 個人の環境でAIツールを使い、実際にどこまでできるかを自分の言葉で話せるようにする
  2. 雑談の中でAIの話題が出たときに、具体例を出して会話に加わる
  3. 導入の検討が動き出したときに、意見を求められる側になっておく

規定を変えるのは、現場に入っている一人のエンジニアには荷が重い話です。ただ、検討が始まったときに声がかかる人になることはできます。そのためには、触ったことがある、という事実が先に要ります。

現場を変えるかどうかの決め方

AIが使えないことを理由に今すぐ転職する、と決める前に、自分の現在地を書き出してください。ENFIは転職ありきで話を進めません。転職、今の現場に残る、社内で異動を希望する、学び直す。この4つを並べて、自分で選べる状態にすることをゴールにしています。

ENFIが受講生に最初に取り組んでもらうBE-DO-HAVEという棚卸しでは、Have(今持っているもの)、Be(5年後の理想)、Do(今すべきこと)の順に書きます。スキルや年収の話より先に、今ある経験とありたい姿を言葉にして、その差から行動を決めるためです。

AIが使えないことが差のすべてなら、個人で環境を用意すれば埋まります。でも書き出してみると、本当に気になっているのは別のところだった、ということもあります。たとえば、今の現場で課題の言語化や設計に関わる機会がないこと。これが問題なら、個人でAIを契約しても状況は変わりません。あなたが不安なのは、どちらでしょうか。

米田は、年収はスキルより環境で決まるとも発信しています。環境を変える判断は選択肢として当然あります。ただ、何が足りなくて動くのかを決めてから動いたほうが、次の現場選びの基準がはっきりします。

今日からできる次の一歩

まず、BE-DO-HAVEのHave1にあたる「職務経験・技術スキル」を書き出してください。関わった案件の内容と、その中での自分の役割、使った技術を並べます。

書き出したら、今の現場で担当している作業を2つに分けてみてください。AIに任せられそうな作業と、自分で判断している作業です。コードの書き起こしやテストデータの作成は前者に入ることが多いはずです。顧客の要望を聞いて仕様に落とす作業や、進め方を決める作業は後者です。

後者が少ないと感じたなら、それが今の現場で取りに行くべき仕事です。前者ばかりで埋まっているなら、現場の外で自分のAI環境を用意して、作る側の経験を増やしてください。どちらに寄っているかで、次にやることは変わります。

よくある質問

現場でAIが使えないと、エンジニアとして不利になりますか

作業の速さという点では不利になります。ただし、課題を言語化する力や計画・マネジメントの経験は、AIが使えない現場でも積めます。現場で積めるものと、現場の外で補うものを分けて考えてください。

現場の外でAIを学ぶなら、何から始めればいいですか

まず普段の生活でChatGPTやGeminiのようなAIチャットを使うことから始めるのがおすすめです。コーディングに使いたいなら、CursorやClaude Codeを個人で契約してみてください。月3000円程度で手が動く状態になります。

客先にAIの導入を提案してもいいですか

立場によっては提案しづらいこともあります。その場合は、プロパー社員とAIの話題で会話できるように、自分で情報をキャッチアップしておくところから始めてください。導入の判断に関わる人と話せる状態をつくることが先です。

業務の情報を個人のAIツールに入れてもいいですか

絶対にやめてください。客先や自社のセキュリティ規定に違反します。現場の外でAIに触れるときは、業務とは関係ない自分の題材を使ってください。