COLUMN
エンジニアのキャリア相談は誰に?利害で選ぶ相談先の地図
この記事の結論
キャリア相談は相手の立場と答えられる範囲で選びます。上司・エージェント・社外の第三者を使い分け、相談前にHaveとBeを書き出すと話が進みます。
エンジニアのキャリア相談は誰にするのが正解?
相手ごとに答えられる範囲と立場が違うので、聞きたい内容によって相談先を分けたほうが早いです。キャリアの迷いをまとめて引き受けられる相手は、基本的にいません。
「誰に相談すればいいか分からない」というときは、自分が何を聞きたいのかが決まっていない場合が多いです。キャリアの迷いには、だいたい3種類が混ざっています。今の職場で何ができるのかという社内の話、同じ経験年数の人がどう評価されているのかという市場の話、自分は何を望んでいるのかという本人の話です。この3つは、答えられる人がそれぞれ違います。
| 相談先 | 答えられること | 相手の立場 | 向かない相談 |
|---|---|---|---|
| 上司・社内の先輩 | 異動の可能性、評価基準、次の仕事 | チームの戦力を保つ責任がある | 退職を含む選択肢 |
| 同僚・エンジニア仲間 | 現場の感覚、技術の使われ方 | 話が社内に伝わることもある | 自分だけの方向性の判断 |
| 転職エージェント | 求人の中身、市場の動き、書類の書き方 | 転職が成立して成り立つ仕事 | 転職しないという結論 |
| 社外のコミュニティやキャリア教育の場 | 利害の薄い立場からの整理 | 相手によって質の差が大きい | 求人そのものの紹介 |
立場があること自体は悪いことではありません。SES営業やフリーランスエージェントという仕事が成り立っているのは、エンジニアが技術者であってビジネスマンではないからだと米田は考えています。誰かが商談や交渉を引き受けているから、技術者は技術に時間を使えます。相手の立場ごとに答えに偏りがあると分かったうえで、使い分けてください。
上司にもエージェントにも話しにくいのは、相手に立場があるから
上司にはチームを回す責任があり、エージェントには人材を紹介して成立させる仕事があります。相手が背負っているものと自分の人生の方向が別なので、話しにくくなります。
それでも、上司にしか答えられないことがあります。社内でどんな役割に手を挙げられるのか、評価は何で決まっているのか、来期このチームはどこに人を増やすのか。社内の事情を聞かないまま転職の検討を始めると、今の会社に残る選択肢だけ情報が欠けたまま比べることになります。「このままでいいと思いますか」と聞く代わりに「このチームで次に任されうる仕事は何ですか」と聞くと、相手も立場を崩さずに答えられます。
エージェントは、求人と市場を知る相手としては有効です。一方で、米田は転職エージェントが転職ありきで話を進めてくると感じています。今の職場に残るという選択肢もあるのだから、フラットに話を聞いてくれる相手のほうが相談者にはありがたい、という見方です。エンジニアの転職支援は非エンジニアが気軽にやるものではない、とも米田は話します。売り込みのない相手を探すなら、勉強会やもくもく会のように継続して顔を合わせる場、今は別の会社にいる元同僚や元上司が現実的です。ENFIも、無料で参加できるENFIエンジニアギルドというコミュニティを運営しています。
相談の前に、HaveとBeを書き出しておく
今持っているもの(Have)と、5年後にどうなっていたいか(Be)を先に書き出してください。これがあるだけで、相手が誰であっても話が具体的になります。
ENFIでは、受講生が最初にBE-DO-HAVEという棚卸しに取り組みます。Haveで現在地を書き、Beで理想の姿を書き、その差からDo(今やること)を決める順番です。Haveには、関わったプロジェクトの内容と役割、使った技術、誇れる成果、仕事以外で身につけた強みを書きます。Beには、「あの人といえば◯◯」と言われたい専門性や、働き方、チームに対してどうありたいかを書きます。ここまで書けると、「どう思いますか」という聞き方から「このHaveでこのBeに向かうなら、何が足りないと思いますか」という聞き方に変えられます。
代表・米田の視点 会社の人に相談できず、かといってほかに気軽に相談できる人もいない。そういうエンジニアが山盛りいると思います。私自身、派遣エンジニアを9年続けて2回目の転職をするまで、誰にも相談できていませんでした。相談できる相手は、そう簡単には見つからないんです。AI時代のキャリアづくりは難しくなっているので、1人に1人のキャリアアドバイザーがついたほうがいいと私は考えています。
相談しても気持ちが晴れないときは、聞き方のほうを見直してみてください。「このままでいいでしょうか」という質問には、誰も答えようがありません。「今の職場であと1年で得られる経験は何か」のように条件をつけると、答えが返ってきます。ENFIは転職ありきでは考えません。転職・残留・異動・学び直しを並べて、本人が選べる材料がそろっている状態をゴールにしています。
今日からできる次の一歩
- Haveを1項目だけ書く。直近のプロジェクトでの自分の役割と使った技術を、3行の箇条書きにするだけで構いません。
- 今の迷いを紙に出して、誰に聞けば答えが出る問いかで仕分ける。社内の事情は上司や先輩に聞き、相場は求人情報で調べ、自分が何を望んでいるかは利害のない第三者と話します。
相談相手を探す前に聞きたいことを決めておくと、同じ時間の相談でも返ってくる答えが変わります。
よくある質問
上司にキャリアの相談をしたら、転職を考えていると思われませんか?
辞めるかどうかを相談すると、その受け取られ方は避けにくいです。「このチームで次に任されうる仕事は何か」「評価は何で決まっているか」のように、社内で完結する問いに絞ると答えてもらいやすくなります。社外の選択肢を含む相談は、利害のない第三者に分けるのが現実的です。
転職エージェントに「まだ転職を決めていない」と伝えてもいいですか?
伝えて問題ありません。ただしエージェントは求人の紹介と入社の成立で成り立つ仕事なので、残留や異動まで含めて一緒に考える相手としては向きません。市場の情報源として使い、意思決定は別の相手と整理するのが現実的です。
相談の前に何を準備しておけばいいですか?
今持っている経験とスキル(Have)と、5年後にどうなっていたいか(Be)を書き出しておくと、相手が誰でも話が具体的になります。完成させる必要はありません。直近のプロジェクトでの役割と使った技術を3行書くだけでも、相談の中身は変わります。
相談相手は1人に絞ったほうがいいですか?
絞らないほうが判断しやすいです。社内の事情は上司や先輩、市場の相場は求人情報やエージェント、自分がどうしたいかは利害のない第三者、と聞く内容で分けてください。同じ質問を複数の人にすると、答えの違いから相手の立場が見えてきます。
社外に相談できる人がいません。どこで探せばいいですか?
勉強会やもくもく会など、継続的に顔を合わせる場が探しやすいです。一度きりの相談より、こちらの状況を知っている相手のほうが具体的な話ができます。ENFIも無料コミュニティのENFIエンジニアギルドを運営しています。