COLUMN

エンジニア転職とお金、注意したい一時的な減りと長期の設計

公開日 著者 ENFI編集部 監修 米田葵

この記事の結論

転職で年収が上がっても、月をまたぐ支出や社会保険・税金の都合で一時的に手取りが減ることがあります。数ヶ月単位の現金と数年単位の年収を分けて考えるのが安全です。

転職でお金はどう動くのか

提示年収が上がっても、入社から数ヶ月のあいだは手元の現金が一時的に減ることがあります。年収の総額は1年分の条件で決まりますが、毎月口座に振り込まれる金額は、締め日や税金、保険の手続きの都合で月ごとに変わるからです。

たとえば入社月の給与は、締め日と支払日の関係で日割りになったり、翌月にずれたりします。年収の提示額に賞与が含まれている場合、入社初年度は査定期間が足りず満額にならないこともあります。米田は、年収を上げるための転職でも、引っ越しや税金、失業保険などの都合で一時的にお金が減ることはあると話します。入社直後の収支が不安定でも、数年単位で見て判断したほうがいいと考えています。

支出が増えやすいのは、次の項目です。金額は会社や住んでいる自治体で変わるので、ここでは何を確認するかだけ並べます。

項目 何が起きるか いつ確認するか
入社月の給与 締め日と支払日の関係で、初回の振込が少なくなったり遅くなったりする オファーを受けるとき
社会保険 空白期間をつくると、健康保険と年金の切り替え手続きと支払いが自分の負担になる 退職日を決めるとき
住民税 前年の所得に対してかかるため、転職後も支払いが続く。給与天引きから自分で納める形に変わることがある 退職の意思を伝えたあと
退職金・企業型確定拠出年金 支給条件や移換の手続きを自分で進める必要がある 就業規則を読むとき
引っ越し・通勤定期・在宅環境 勤務地や働き方が変わると初期費用が出る 勤務条件が決まったとき

収入が1ヶ月途切れても生活費をまかなえるかを先に計算しておくと、生活費の心配をせずに条件を比べられます。

年収の提示額だけでは比べられない理由

提示年収が同じでも、基本給の割合や手当の有無で、実際に受け取る額と数年後の年収の上がり方は変わります。総額の数字に加えて、基本給がいくらで手当がいくら含まれているのかまで確認しておく必要があります。

賞与の計算は基本給をもとにする会社が多く、米田自身、転職のときには基本給がいくらで手当がいくらなのかをきっちり把握していました。基本給が低く、固定残業代(一定時間分の残業代をあらかじめ給与に含める形)や各種手当を足して総額を大きくしている場合、賞与の額や残業代の単価が低くなることがあります。家賃補助のように毎月の生活費を直接下げる手当も、比べるときに忘れずに入れておきます。

そのうえで米田が気にしたほうがいいと挙げるのが、昇給のしやすさと評価制度です。等級の仕組みがあるか、何を評価されると等級が上がるのか、直近で実際に昇給した人がいるかを面談で聞いてみてください。昇給の基準がはっきりしない会社だと、入社時の年収がそのまま数年続くこともあります。

退職の意思を伝える前に、次の順で確認しておくと入社後の想定外が減ります。

  1. 現職の賞与と退職金の支給条件、支給日を就業規則で確認する
  2. オファーの内訳を書面でもらう(基本給、固定残業代の有無と時間、賞与の実績、手当)
  3. 昇給の仕組みと評価の基準を面談で聞く
  4. 入社月の給与の締め日と支払日を確認する
  5. 空白期間をつくるかどうかを決めて、必要な手続きを調べる

現職に賞与や退職金の条件を確認するときは、不満を伝える場にせず、給与の内訳や支給条件といった事実だけを聞きます。米田は、揉めるような辞め方はやめたほうがいい、黙って淡々と転職するのが一番だと考えています。

一時的に減るなら、転職はやめたほうがいい?

入社直後の支出は、ここまでの準備である程度小さくできます。一方で、数年後に年収がどれだけ上がるかは、入る会社の評価制度や事業によって変わります。入社直後の手取りだけで決めず、数年後に任される仕事と年収の上がり方まで比べてください。

ENFIは転職ありきで話を進めません。お金の面で何が変わるかは、残留でも異動でも学び直しでも考えられます。今の会社に残れば引っ越しも手続きも発生しませんが、昇給のペースは今の制度のままです。社内異動なら生活費の変動を抑えたまま役割を変えられます。学び直しは当面の支出が増える代わりに、選べる仕事の幅が変わります。残る場合も、ほかの選択肢と条件を比べたうえで決めておくと、今の会社で何を実績にしていくかを考えやすくなります。

代表・米田の視点 お金が不安で踏み切れないときは、長い目で見て一時的な年収ダウンを回収できるかを見積もってみてください。私も転職のとき、年収が下がる可能性がありました。ただ、しっかり評価してもらえて数年で年収は上がりました。年収が上がるかどうかは、その会社がどんなビジネスをしているかが大きいと思っています。

年収は、ありたい働き方を成り立たせるための条件として考えると決めやすくなります。ENFIのBE-DO-HAVE棚卸しでは、今持っている経験(Have)、5年後のありたい姿(Be)、そこへ近づく行動(Do)の順に書き出します。Beの設問には、リモートや裁量、年収、私生活とのバランスといった働き方の希望が並びます。必要な額が先に決まると、譲れる条件と譲れない条件を分けて考えられます。

お金の不安が消えないときは、次の2つを書き出すところから始めてみてください。

今日からできる次の一歩

情報を集める前に、手元の数字と希望を1つずつ書き出してみてください。

  1. 直近3ヶ月の手取りと固定費を書き出し、収入が1ヶ月途切れたら何ヶ月もつかを計算する
  2. 「5年後、どんな働き方をしていたいか(リモート・裁量・年収・私生活とのバランス)」に、1行だけ答えを書く

この2つを書いておくと、求人を見るときに、手取りと働き方の両方の基準で比べられます。転職するかどうかは、そのあとで決めても遅くありません。

よくある質問

転職先が決まる前に退職してもいいですか?

空白期間をつくると、健康保険や年金の切り替え手続きが自分の負担になり、収入が止まる期間の生活費も必要になります。先に次の所属を決めるか、何ヶ月分の生活費を確保できるかを計算してから判断するのが安全です。

住民税は転職しても払い続けるのですか?

住民税は前年の所得をもとに課税される仕組みのため、転職や退職の直後も支払いが続きます。退職のタイミングによって、会社の給与天引きから自分で納める形に切り替わることがあるので、現職の担当部署に扱いを確認しておくと安心です。

オファー面談で給与の内訳を聞くのは失礼ですか?

基本給と固定残業代の内訳、賞与の実績、昇給の仕組みを確認するのは通常のやり取りです。入社後の認識違いを防ぐための確認として、書面で示してもらえるか聞いてみてください。

年収が下がる転職は避けるべきですか?

下がる額だけでは決められません。数年後にどんな仕事を任されるか、昇給の仕組みがあるか、その会社のビジネスで給与がどう決まるかまで比べると、下がった分を数年で取り戻せるかを見積もれます。

転職しないでお金の状況を変える方法はありますか?

社内の異動で役割を変える、評価制度の基準に合わせて実績を積む、学び直して選べる仕事の幅を広げるといった選択肢があります。条件を比べたうえで今の会社に残ることも、選択肢の1つです。