COLUMN
エンジニアの市場価値が分からない人へ。測り方と見直す順番
この記事の結論
市場価値は点数ではなく、誰のどんな課題をどこまで任せられるかの一致度です。Haveの棚卸しと求人票の読み方から測り直せます。
市場価値が分からないのは、物差しを持っていないから
自分の市場価値が判断できないのは、能力が足りないからではありません。これまでの経験を、誰のどんな課題をどこまで解いてきたのか、という形で説明したことがないからです。
スキルシートに書けるのが使用言語と担当工程と経験年数だけ、という状態はよくあります。ただ、その3つはどこにどれだけ在籍したかの記録であって、何ができる人なのかの説明にはなっていません。だから他人の年収や転職体験談と比べるしかなくなり、比べても結論が出ないままになります。
米田が最初に確認するのは、過去の経験で顧客にどういう影響を与えてきたかです。どんな言語で、どんな工程をやってきたかは、実はあまり見なくていい項目になってきていると話します。
ENFIは、キャリアに迷っている人を能力不足とは考えません。経験はすでにあるのに、それを人に説明できる形で書き出していないだけ、ということがほとんどです。市場価値が分からないという状態は、たいていこの段階で止まっています。
市場価値は何で決まるのか
持っているスキルの数だけでは決まりません。誰の課題を解けるか、どこまで任されているか、それをどんな環境で提供しているか。この3つの組み合わせで決まります。
スキルの量より、任された範囲
同じPythonで3年開発という経歴でも、仕様が固まった状態で実装を担当したのか、顧客の困りごとを聞いて実現方法を決めたのかで、話せる中身はまるで違います。採用する側が見ているのは、どこまでの判断を自分でしたのかという範囲です。
経験年数は任された意思決定の範囲に、使用言語はその言語で解いた課題の種類に、担当工程は上流と下流のつなぎ目でやった調整に置き換えて書き出してみてください。書けない項目があっても構いません。書けない項目は、今の自分の能力の限界ではなく、まだ言葉にできていない経験がある場所だと考えてください。
同じスキルでも評価が変わるのは環境の違い
同じ技術力でも、会社がどこで利益を得ているかによって、エンジニアに配分される金額は変わります。これは個人の優劣ではなく、ビジネスの構造の話です。自分のスキルが低いから年収が上がらないと結論づける前に、今いる会社がどうやって売上を作っているかを見たほうがいいと考えています。
代表・米田の視点 大手SESにいたころの私は、与えられたポジションをこなす役割でした。その後、中小SIerに転職して年収が上がりました。年収はスキルより環境で決まると思っています。年収が上がるかどうかは、その会社がどんなビジネスをしているかが大事なんです。
自分で市場価値を測る4つの手順
他人と比べる前に、自分の材料を並べて、求人票の言葉と突き合わせます。順番があります。
- 直近3年で任された仕事を、プロジェクトの内容、自分の役割、使った技術の3点で書き出す
- 誇れる成果、乗り越えた課題、チームへの貢献を、それぞれ1つずつ文章にする
- 気になる求人票を10件読み、必須要件に出てくる言葉と、1と2で書いた自分の言葉を突き合わせる
- 当てはまらなかった言葉を3つだけメモする。その3つが今の差分
手順3は応募するためではありません。市場がどんな単語で人を探しているかを知るためです。ENFIの基本プランでも、棚卸しのあとに求人分析で市場の動きを見て、本人の目標と照らし合わせる流れを取っています。
このとき、経験3年以上のような条件に振り回されないでください。米田は、経験年数の条件自体にあまり意味はないと考えています。AIにコードを書かせられる今、Pythonを3年書いてきたという事実が何を保証するのか、という話です。採用側に求められるものが変わっている中で、言語の経験年数だけで候補者を見る会社には注意したほうがいいかもしれない、とも話します。
スカウトが届くかどうかも、参考情報ではありますが判定ではありません。米田自身は転職のときにエージェントを使わず、転職サイトでは企業からの直接スカウトだけに対応しました。届く数より、届いた求人が自分の書き出した経験とどこで一致したかを見るほうが役に立ちます。
なぜ学び直しより先に棚卸しなのか
差分が分からないまま勉強を始めると、市場での評価ではなく自分の安心感を買うことになるからです。
ENFIでは、キャリアの棚卸しをHave、Be、Doの順番で進めます。最初に今持っているもの(Have)を書き出し、次に5年後のありたい姿(Be)を決め、最後にそこへ近づく行動(Do)を選ぶ。スキルや年収は出発点ではなく、この順番の先に出てくる手段と結果だと考えています。
市場価値が分からないという悩みは、Haveの棚卸しを飛ばしたまま、年収という結果だけを他人と比べている状態で起きがちです。順番を戻すと、自分のどこを見ればいいかがはっきりします。
Beの設問は2つだけ試してみてください。ひとつは「あの人といえば○○」と言われたい専門性。もうひとつは、働き方とライフスタイルです。リモートの有無、裁量の大きさ、私生活との配分。この2つが決まらないと、差分を埋める学習の優先順位も決められません。
価値を上げる選択肢は転職だけではない
選べる道は4つあります。今の職場で任される範囲を変える、社内で異動する、学び直す、転職する。この順に検討する価値があります。
米田が転職より先に現職での行動をすすめるのは、今の職場でまだやれることがあるか、新しいポジションや役割を取っていけるかがYesのときです。どちらもNoなら、会社やビジネスの構造そのものを変える選択肢を考える段階になります。
| 選択肢 | 向いている状況 | 得られるもの | 注意したいこと |
|---|---|---|---|
| 今の職場で役割を変える | 手を挙げれば任される余地がある | 実績を積みながら範囲を広げられる | 希望を伝えないまま待っていても変わりにくい |
| 社内で異動する | 会社のビジネスは納得できるが、今の部署で役割が増えない | 人間関係と信用を保ったまま環境を変えられる | 公募や上長との面談など、動くタイミングが限られる |
| 学び直す | 求人票と自分の経験の差分がはっきりしている | 次の役割に手を挙げる根拠になる | 差分が曖昧なまま始めると、勉強すること自体が目的になる |
| 転職する | 今の会社で任される範囲が頭打ち | ビジネスの構造ごと変えられる | 引っ越しや税金などで一時的にお金が減ることもある |
転職を選ぶ場合も、揉めるような辞め方は避けて淡々と進めるのが結局いちばん楽だと米田は話します。業界は思ったより狭く、前の職場で得た信用は次の職場にも伝わります。
AI時代に、測り方は変わるのか
測る軸は動いています。どれだけコードを書けるかより、何を作るかを決められるかに評価が寄ってきている、というのがENFIの見方です。
米田は、エンジニアはITコンサルにならないといけないと考えています。クライアントの現状と課題を把握する力。その経験が一番の栄養になる、という言い方をします。逆に、どの言語やフレームワークを使ってきたかは評価されにくくなりました。初めて触る技術でも、AIに聞きながら使えるようになるからです。
AIはドーピングのようなもので、扱える人が強くなる道具だというのが米田の立場です。仕事がなくなるとは考えていません。変化に対応できるかどうかだけだと話します。
ENFIのQUESTにも「暗記は禁止」という掟があります。コードを覚えることに頭を使わず、何を作りたいかに頭を使う。書き方はAIに聞けばいい。市場価値の測り方としても、同じ軸で自分の経験を見直せます。あなたが直近で「これを作ると決めた」のは、どの場面でしたか。
今日からできる次の一歩
まず、材料を1つだけ外に出します。
- 直近で一番苦労したプロジェクトと、そこでの自分の役割を5行で書く。ENFIのHaveの設問を1つ答えるだけで構いません
- 気になる求人を5件開き、必須要件に出てくる単語だけを書き写す
この2つがそろうと、自分に足りない言葉と、すでに持っているのに書けていなかった言葉が分かります。応募するかどうかの判断は、そのあとで大丈夫です。市場価値は今日の点数ではなく、数年かけて動かすものだと考えています。
よくある質問
転職サイトのスカウト数で市場価値は測れますか
参考にはなりますが、判定にはなりません。スカウトは企業の採用計画や登録情報のキーワード一致でも動きます。自分の経験を言語化した結果と併せて見るのが現実的です。
経験年数が長いのに年収が上がらないのは自分のせいですか
個人の能力だけで決まるものではありません。任されている役割の範囲と、会社のビジネスの仕組みの両方が影響します。まずはどちらが強く影響しているかを分けて見てください。
資格を取れば市場価値は上がりますか
自分に足りない部分を埋める資格なら意味があります。ただし差分が分からないまま取ると、不安の解消で終わることがあります。求人票の必須要件と突き合わせてから決めると判断しやすいです。
市場価値を測るのに転職活動をする必要はありますか
必須ではありません。求人票を読む、職務経歴書を書いてみる、といった形でも市場で使われている言葉と自分の経験は突き合わせられます。応募するかどうかは、そのあとで決められます。
AIが書ける範囲が広がったら、今のスキルは無駄になりますか
コードを書く作業の比重は変わっても、何を作るかを決める力の価値は残ります。クライアントの現状と課題を把握する経験は、引き続き評価されやすい部分です。